2012/01/28

日本企業の設備投資動向と海外展開

というタイトルの講演を聞いてきました。
講演者は、日本政策投資銀行チーフエコノミスト 鍋山徹氏。


物事の本質に迫る素晴らしい講演でした。

気になったキーワードを中心に感想。

日本人はアナログに強い。ややこしいことするのは、日本人ぐらいだと。
和菓子は機械で作られるが、洋菓子は基本手作り。それは、お菓子を機械でつくるということが、ややこしいので西洋人はやらない。という指摘。その延長で、萩の月と東京バナナは同じ機械で作られている。しかし、味は違う。それは材料の配合がアナログであり、企業秘密だから。
このように、デジタルの中にもアナログが入ると、日本人の強みが発揮され真似されにくい。なるほど。それは、生産工程に人手を入れるというのもアリとのこと。そう言えば、今の主流は工場の完全自動化ですね。この先、どうなるのかなー。
配合に妙があるというのは、素材・化学が強いことにも通じている。という指摘。

都市伝説は100ある内1つは本当が混ざっている。TwitterやFacebookも嘘が99%(たぶん極端に表現しているが、それは多くが伝聞により書かれているということ)。だから、本当のことを見極める力が必要。それは情報に(限らずあらゆることだが)依存せず、自立せよ。というメッセージ。確かに、専門家や著名人の意見・講演を鵜呑みにするのは危険ですね。自分の意見を持たないといけません。

経済成長の推移と要因によれば、人口が与える成長への寄与度は1%以下。つまり、人口減少社会だからお先真っ暗というのは、必ずしも正しいとは言えない。実際に、「人口の話は確かに経済成長の要因ではあるが、それよりも新しく富を製造する(イノベーションを起こす)ことが大事。イノベーションによる将来性を過度に悲観すると、期待成長率が下がる。
つまり、著名人やマスコミが「6重苦」とか「日本は衰退の道しか無い」とか過度に宣伝することが、本当に衰退を起こすようなパラドックス。もっと日本人は自分たちに自信を持って、将来へ楽観的になる必要もある。同感です。

鍋山氏はクラウド(IT)に非常に可能性を感じられているようでしたが、この辺は難しい問題だと思います。
クラウドファンディング(ネットを通じて個人が任意のPJへ投資ができる)も可能性が高いと。
例えば、東北の個人商店が震災から立ち直り店を再開するための開業資金に1000万円が必要として、おそらく今の銀行はこういったところへ貸出が出来ない。それを、クラウドファンディングでやりましょう!ということなのですが。
これって、知る人は知る、ソーシャルレンディングとは、違うものなのでしょうか。これは、余り上手くいっていないという話を耳にするのですが、一度しっかりと調べてみたいです。

部品点数にして、30-30,000点が日本が強みを発揮する。工場のマネジメントが可能だから。つまり、本社支配が無い。日本は工場は強いのに、本社が弱い。本社はTQCが出来ていない。うーん。東大の藤本先生も同様のことを言われている。実に80%の会社が本社が弱い。しかも、増加傾向にあるとか。

良い社長の見極め方。
「社長が一人で現場に行っているかどうか」
とのこと。確かに、ありそうですね。今後、注目してみよう。

奥山清行さん(フェラーリのデザインをされた方!)のプレゼンは日本一!是非、一度聞いた方が良い。出張してでも聞いた方が良い。とのこと。
うん。機会があれば聞いてみたいです。
プレゼンとは伝えることなのだから、もっと伝わるように考えよう。という指摘。鍋山氏は食事の例えを多く使いつつ、食事をする時にまた思い出せるでしょう。とのこと。なるほど。相手が理解できる比喩やたとえ話を沢山考えないと駄目だな、と改めて感じます。

儲かっている人は黙っている。損?をしている人が騒ぎたてる。確かに(笑)

大企業に限った統計だが、海外投資は確かに増えているが、国内投資も半分近くが増やしている。減らしているのは1割程度。つまり、決して国内投資を止めて、その分を海外投資に回している、と言うわけでは無い。一つの統計的事実ですね。

日本人はモノを通じないと理解ができない。概念力が弱い。という指摘。
であれば、全てにモノを絡ませて発想するようにすれば良いのでは無いだろうか。

都市は「人材の多様性を受け入れられるか」
ビジネスは「差異性があるか」

それが重要。

AKB48は全体最適でメンバー同士が高め合っている。
日本の技術職では、足の引っ張り合いがある(らしい)。それは、雇用に流動性が無く、その場所をみんなが守ろうとするので、勢い相手を蹴落とす方向に行く。出世争いもその一つでしょうかね。
ちなみに、アメリカは成果主義なんてやっていないよね。という指摘。日本人は、成果主義の一側面だけをくそ真面目に実践してしまったんですよね。しかし、昔ながらの日本的終身雇用にも弊害があり、今の社会に適合していないのも事実で、そのような意味ではハイブリッド型か、全く新しい在り方かを考えていく必要があるわけですね。これが難しいですね。

その他、遺伝子の話からチョウザメの養殖まで、本当に多岐に渡る話があり内容の濃い講演でした。
日本の未来を明るくするための、具体的な話は無いが、だからこそ本質に迫っており個人的には有意義な2時間でした。即物的な答えを聞こうとしていた参加者がいたとしたら、肩すかしだったでしょう。でも、そういう方々もその本質?に気付いたのであれば、本当に有意義なことなのだと感じます。

最後に、
プロは出来る方法を考える
アマは出来ない理由を言う

みんながプロフェッショナルになれると良いですかね。
少なくとも、知識創造社会においては、全員がプロであるべきでしょうね。弊社も、そのようなことを標榜する企業ですので、全社員にこういう意識を持たせる教育なども必要になってくるのでしょうね。自分も、ともするとアマになっていることがあるので、反省の念を込めつつ。さて、どうやったら”このビジネス”が上手く行くのだろうか、風呂に入りながら考えようかな。

散漫な感想で恐縮ですが、お付き合い頂きありがとうございます。
機会があれば、一度、鍋山氏のご講演を聞かれることをお勧めします。弊社の社内セミナでご講演を頂けないかなー。本当の日本人、その強みとは。みたいなタイトルで。

(Y.Nobuka)

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