2012/03/22

重要無形文化財(蒔絵)保持者のご講演

人間国宝であられる「室瀬和美」氏の講演を拝聴してきました。
http://www.murose.com/

東京大学医科学研究所の勉強会一環だったのですが、シアターテレビが入ってました。
http://live.nicovideo.jp/gate/lv85880465
 最後の質問者は、自分です・・・

「今に生きるうるしの文化」というタイトルでした。

漆の歴史に始まり、漢字の成り立ち、科学的・学術的な研究結果まで非常に幅が広く、中身の濃いご講演でした。
正直、「うるし」に強い興味があったわけでは無かったのですが、講演を拝聴して目から鱗でした。

本ブログに通ずるところで気になった箇所は、

漆器の品質は、ボディが9割。屋台骨。素材である木だけでなく、その下地作りによって決まる。

下地作りとは、完成してしまえば素人には全く分からないもの
(逆に言えば、下地が適当でも仕上げを綺麗に行えば、それなりに見栄えがするものができる?!)

実際、素人には判断が出来ないそうです。プロが見れば、分かるそうですが。
質問でもあったのですが、じゃあ素人はどうやって見分けるの?というと、、、値段しか無いとか、、、

さらに、本当に良いものを作るには、20年~30年かけて完全に乾燥させた木を使う
そうすることで、乾燥による劣化を防げる
(その証拠に、マリア・テレジアが収集していた漆器は今なお原型を留めている)

下地もそうだが、手を抜こうと思えば簡単に手を抜ける。結果、安い製品が大量に作れるだろう。
しかし、そうすると結局は土台が劣化していくという悪循環がある

組織も、仕事(プロジェクト)、料理だって、何にでも通ずることですね。

また、室瀬氏はうるし文化を広く普及していきたい、という中で既成概念に捉われず、様々な分野にチャンレジされていた。

ハープ、チェス盤、葉巻入れ、、、

既成概念や思いこみは、自分の世界を狭めるだけでなく、現実をミスリードしてしまいます。
組織作りの際も、最初に作る土台が大事なことは言わずもがなですが、そこから既成概念や思いこみに捉われず、どのように変化へ対応していくのかが、大事ですね。

最後に、本当に良いものほど乱暴に扱っても(語弊があるが)大丈夫らしいです。
漆は一度固まってしまえば、硫酸や塩酸でも溶けることが無く、王水と呼ばれる金を溶かす酸にだって耐えるそうですよ。だから、洗剤なんかで劣化することはまず無いそうです。。。熱にも強いとか。物理的な衝撃は避けた方が良いので、食器洗い機はダメだそうですが。

<その他、こぼれ話>

おわん、という字は用途によって3つある

茶碗 (PCが勝手に変換するから気付きませんが、ちゃんと”碗”の字が変換されます)
飯椀 (木へんです) 
金属の鋺

茶碗は、茶室でお茶を飲むことを想像すると分かりますが、グツグツと熱い湯でお茶を点てるのですが、そのあとは直ぐに飲んで欲しいから、直ぐに冷める熱伝導率の良いものということで、石が使われていたそうです。
それに対して、飯椀は、木の椀なのですが、木は逆に保温効果が高く、熱々のご飯を入れれば20分でも30分でも冷めないそうです。良く噛んで食べましょう。と言うが、茶碗に入れてしまうと、確かに10分ぐらいでご飯が冷めてきますよね。
ということで、ご飯は”お椀”に入れましょう。というのが室瀬氏の提言でした。
そもそも、「ご飯茶碗」なんて日本語は無い!と言っていましたが。

伝承は不変に伝えていくもの
伝統は変わらなければいけないもの

漆の生息域は、東洋のモンスーン気候である、日本列島、朝鮮半島、中国大陸(最西は、ブータンだとか)
ウルシ科の植物は他に、マンゴーやカシューナッツなども

ヨーロッパの人々は、漆器のその素晴らしさに、漆や漆器のことを「japan」と呼んでいたそうです。
陶器を「china」と呼ぶのと同じですね。残念ながら、「japan」の方は廃れてしまったようですが。

元々は、桼という漢字が入ってきたが、日本ではその水気の多さから「サンズイ」がついて、今の漆になった。

最後は冗長になりましたが、良い経験をさせて頂きました。
実際の作品も拝見しましたし、作業工程も一部見せて頂きました!

(Y.Nobuka)

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