『MBB:「思い」のマネジ メント』
http://www.amazon.co.jp/dp/4492521860
「自分はこの仕 事が好きなのか?」「この仕事は何につながっているのか?」こういった問いを、果たしてどれだけの人が日々意識しているだろうか。実際、 日々の業務は、個人の思いを無視してもこなせるだろう。むしろ、業務は自分の関心とは関係ないところから日々降ってくることを考えると、 個人的な思いは敢えて無視したほうが仕事はうまくいくともいえる。
この現状に対し て、著者は疑問を投げかける。目の前の仕事が、自分の好きなことでもなく、自分の喜びにつながっているという実感も持てずに、どうして生 き生きと仕事ができよう。実際、世には仕事を楽しむことができず、日々の業務に忙殺され、「仕事にやられている」人がたくさんいる。これ は個人にとってだけでなく、経営にとっても大きな損失だと主張する。そして、解決手段として、MBB(Management by Belief)に基づいた経営を提唱する。
多くの企業は、 現在、MBO(management by object)に基づいた経営を採用している。すなわち、企業の目標 をまず設定し、そこから各個人が達成すべき目標を算出するというやり方である。しかし、この方法では、個人の目線から見れば、眼前の目標 と自分の思い(この仕事が好きといった感情や、自分の幸せにつながっているという実感)に何の関係も見いだせないということになる。
MBBでは、目標設定と実行にあたり、「会社の目標や組織の背景にある経営 陣や上司の思いと自分自身の仕事やキャリアに対する思いをぶつけあう」ことにより、「会社にとっても自分にとっても意味のある業務上の目 標を見出す」ことを前提とする。これがなされれば、人は、日々の業務にて、自分は好きなことをしていて、この仕事の先に喜びがあるという ことを実感できる。オンとオフの境界もあいまいになる。そして、このような管理が実現されている企業として、グーグルや星野リゾート、 M&Aのレコフなどの例が挙げられる。
私個人として は、そもそもMBO型組織に適応できる人間を育てるように教育が回っているので、個人の「思い」を持った人がいないのは、半ば当然である という問題意識で読んだ。幼いころから長きにわたって、遊びによって思いを発散させるよりは、受験勉強や習い事などにて目標達成すること が期待され、「思い」を殺し続けて大人になった人で溢れているのが現代ではなかったか。そう考えると、根は深い。
その意味で、本書で取り上げられているMBBセッションや、日常の対話のプ ロセスで「思い」を高質化する、セルフコーチングなどの、MBB実践のプロセスが、「思い」を押し殺してやってきた人に対して、どれだけ の効果をもたらすのか。果たして殺され続けた個人の「思い」は回復させられるのか、という点は非常に興味深い。できることなら、今後の業 務でこういったプロセスの効果を、実際に自分の目で確かめられたらと思う。
全体としては、人はもっと生を慈しめる、組織は人の幸せのためにあるのに、 組織が人の幸せを奪うのはおかしい、その理不尽を解消したい、という著者陣の思いと、人間に対する温かい目線を、本書の根底に垣間見た。
(Y.S.)
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