2011/06/09

MBB:「思い」のマネジメント”~知識創造経営の実践フレームワーク~ (Mai Takashima)

本書のタイトルである「マネジメント」という言葉に対してトップ層や経営層の方のみを対象として書かれているのでは、と感じる方もいるかもしれないがそうではない。
この本はカバーにも書いてあるように目の前の課題を追うことに夢中になり、個人の夢を「思い」を忘れている、仕事の意味ではなく仕事をいかにうまくやりこなすことを考え、疲れてしまっている現代社会人に向けられた本である。
本書では個人の「思い」を尊重し、仕事へ取り組むマネジメントスタイルについて語っている。

第1,2章では現代における「思い」のマネジメントの必要性を語っている。
目の前の仕事をこなすことのみ集中し、狭い組織文化で生きていく現代社会人を本書では「粒々族」と呼び、彼らの感じるやらされ感や疲弊感は成果主義、収益確保にとらわれる現状のマネジメントに問題があると指摘する。本来個人の思いや夢を実現させるための手段である仕事には、人の「思い」を組んだマネジメント手法のMBBが必要であり、個の「思い」の強さがビジネスを成功に導いた例をあげることにより、その重要性を立証している。文中に出てくる“Remember who you are.”という言葉が自分自身の組織においての主体性を問われているようであり、会社において受動的になりがちな自分の姿を見たようではっとさせられた。

第3,4章では、筆者はトップが目標を部下に割り振るだけのMBOではなく、トップのビジョンと部下の思いの共有により部下個人が主体性をもって仕事に取り組めるような目標設定をさせる、MBBを前提としたMBOを提唱している。現状のMBOでは不足している思いの共有や対話するエネルギー・時間、数値目標達成による評価だけでなく、思いをもって働きどれだけ学べたかという学習プロセスを評価することこそ大事だという。また、実際にトップのビジョンと社員の思いがつながり、ビジネスが成功した例の紹介によりMBOとMBBの統合の有効性と実行性が裏付けされている。例に挙げられている星野リゾート社長の「リゾート運営の達人カップ」は人間的な面白みをもちながらもトップのビジョンと社員の思いをつなげる仕掛けだと興味深く感じた。

第5章、最終章ではMBB実践の手法とそれからつながるグローバル展開について話している。MBBでは個人が自身で深めた思いを他者と共有することで、社会への貢献につながるビジョンを広げ、主体性をもって仕事という行動に移していくというプロセスの整理が記されている。個と他者の思いのあぶり出し、磨く手法として「MBBリーダーセッション」など具体的な仕掛けを紹介すると同時に、MBBによって社会貢献・ビジネスの発展性の高さを意識した「思い」は国内にとどまらずグローバルなビジネス展開につながることを述べている。私としては、これまで紹介されてきたMBBによる成功例になぜ国外への展開成功例が含まれているのか疑問に思っていたのだか、その理由が明確になる章であった。

本書では一貫してMBBにおけるリーダー像の話をしている。それはMBBでは組織においてトップの方が自分の思い、ビジョンを語らずして部下の思いの実現は難しいと考えるからだ。トップは社会全体に貢献する、発展性のある思いを持ち、それを共有する。相手(部下)の思いをくみとって創造的対話によって部下が仕事に思いをそそげる意志力を引っ張り出してあげることこそが大事だと考ええるからだ。

最後になったが冒頭で述べたように本書はリーダーをはじめ、現代社会人にむけられた本であると思う。
この本を読み終え、これから新社会人として働いていく中で、まずは自分の中に眠っているであろう「思い」に耳を傾け、仕事にどうつなげていきたいかのビジョンを持ちたい。そしてそれを他者とぶつけることを恐れずに行きたいと思った。

(Mai Takashima)

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