はじめまして 構造計画研究所 経営人事ソリューション室の秋元です。
当社(株式会社構造計画研究所)は当初は建築構造設計として設立され、現在では様々な工学知をご提供させて頂く総合エンジニアリングファームへと成長を遂げ、今年で創立50周年を迎えました。そして、私たち「経営人事ソリューション室」は、エンジニアリングサービスで培った科学的な考え方を経営や人事の課題解決に活用しようという新しい試みを担うチームです。どうぞよろしくお願いします。
さて、早速ですが本日の話題です。
当社は構造計算や振動解析などのソフトウェアの開発・販売などを長い間手掛けてきましたが、自動式一貫設計システムの開発・提供はしてきませんでした。それはなぜでしょうか。構造計算や振動解析は「現実に似せたモデル」を解いているだけで、実際の現象を完全に把握できている訳ではありません。私たちは、「設計という意思決定」には技術者(あるいは専門家)による“ジャッジメント”が必要であり、一問一答式に結果が出るソフトウェア・システムは、ある意味有害と考えているからです。
解析などの計算ができる(モデル化が前提となりますが)ということと、その結果をどう判断するかは別の問題です。工学の世界で重要なことは、「合理的な判断をしようという努力」を繰り返すことです。そしてそのプロセスから得られるナレッジの蓄積とその応用力こそが前進をもたらすのであって、投入された値から機械的に判断された結果のみを提供するシステムは、その助けとならないばかりかエンジニアを思考停止させエンジニア自身の成長と工学の進歩の両方を阻害してしまいます。
私たちは、工学的なテクニックを経営や人事の世界にもご提供したいと考えている訳ですが、そのように紹介すると「それでは是非とも最適な結果を出して欲しい」などとよく言われます。もちろん、内容によってはそれで問題ないものもあるでしょう。しかし、経営や人事の問題の多くは、目標や目的が単一ではなく多属性・多目標であり、関連する要因間の関係も複雑です。それに時代による変化や、業界や立ち位置の違いによってかなり異なることも考えられます。また、データの信頼性、モデル化の技術、解析・分析の技術なども、その適用範囲や精密さの水準などによって「最適」という言葉の表す意味の範囲は自ずと変わってくるものと思います。
そもそも近代科学は、要素還元主義的に全体の一部分を緻密に分析することで発展してきました。一方、経営や人事の問題など社会系の多くの課題は複雑な相互関係性を持った課題であり、既存の科学的アプローチはたいして役に立たないという見方もあるでしょう。しかし、いつまでもKKD(勘・経験・度胸)の論理で経営や人事の問題を解決しようとしていては、いつまで経っても回避可能な判断ミスは無くならないでしょう。以前、スズキのCEO兼COOである鈴木修氏の迅速な不景気対応を勘ピュー ターと紹介する記事
(http://moneyzine.jp/article/detail/142318)
を目にしましたが、「勘」こそは過去と現在のデータを複雑に評価分析し統合した結果の意思決定であり、そこにサイエンスを以て挑戦し続ければ、少しずつでも鈴木氏(人間)の意思決定に近づいていけるだろうし、超えていくことすら可能だと考えます。
「アートとサイエンス」と言われる経営、あるいはその経営へのインパクトが大きい人事の問題に対し、サイエンスの視点を提供しようというのが当社の立場です。「サイエンスで全てが解決する」とか、「アートは意味がない」などと考えている訳ではありません。「結局はバランスだ」と言えばつまらない話になりますが、アート的なものとサイエンス的なものの共創が組織をイノベートしていくための一つのカギなのではないかと思っています。
(秋元正博)
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